「ピヨピヨ、ピヨピヨ」
山彦さんのアラームが鳴る。
「ピヨピヨ、ピヨピヨ、ピヨ」
「うーん」
どうやら山彦さんが起きたらしい。
近づきながら「おはよ。寒いね、うーちゃん」と言う。
そばまでやってきて、寝ていたうーちゃんの頭をぐりぐりと撫でまわしてから、Uターンして洗面所に顔を洗いに行ってしまった。
続いてのっそりと起き上がったまめまるさんが呟く。
「さぶっ」
確かに寒い。
けど、お腹がすいた。
どーれ。
うーちゃんも起きるとしますか。
するりとお布団から滑り出て、両手を前について、おしりを持ち上げて、思いっきり体を伸ばす。
続けて、右足、左足を順番に念入りに伸ばして、いつでも動ける準備が完了。
「ふにゃ～」
おっと、油断したらあくびが出てしまった。
右足で耳をポリポリしてごまかす。うーちゃんが体をのびのびしている間に、キッチンではめまるさんが山彦さんのお弁当作りに取り掛かっている。
まめまるさんを目掛けて、いざ出動。
まずは足元ですりすりして、ちょいちょいして「起きたよ～」とアピール。
「うーちゃん、起きたの～、おはよう」
まめまるさんがそう言って、頭を撫でてくれる。
「おしっこ行ってくるから、ご飯お願いね」
お腹すいてるんだよ。
「はいはい、我が家の１番さん。任せてね」
まめまるさんは、1番はうーちゃん、２番は山彦さんっていっつも歌うように言う。
「いっぱい食べるからっ」
大盛にしてって事だよっ。
ダッシュでおしっこに行って帰ってきた。
なんだか今日はトイレが寒い。
ブルブルしちゃうよ。
「ご飯できてるよ～」
まめまるさんの声がした。
いつものご飯。
うーちゃんの好きなカリカリとパウチのご飯がそれぞれお皿に入って、二つ並べられていた。
少し大盛になってる気がして嬉しい。
お水はお湯になっている。
よしよし。
うーちゃんは、パウチご飯はすぐ食べる、カリカリご飯は時間を空けてちびちび食べると決めているんだ。
パウチのご飯は大好きだから、食べておかないと無くなっちゃうと悲しいからね。
「あぁ、今日も美味しいな」
またお布団に戻ろう。
もう一回寝るのだ。
今度はうーちゃんのお布団。
ホットマットの上にひざ掛けを置いて快適温度で眠れるようになっているパラダイス空間。
暖かい空気に包まれると、頭がぼんやりする。
もう夢の中。
うーちゃんは夢の中でセミを捕まえようといっぱい走る。
蝶々やテントウムシもいる。
やっほーい。
走って走って、遠くまで走って…。
「うーちゃん、う～ちゃ～ん、ときときするよ～」
おっ、まめまるさんの声が遠くで聞こえる。
呼んでる。
うーちゃんを呼んでる。
急いで戻らなくちゃ。
まめまるさんの声がする方にダッシュで戻った。
はっ！
まめまるさんが何回も呼んでいる。
ずいぶん眠ってしまったな。
「ときときするよ」って言っている。
「ベランダでときときするよ」って言ってる。
目が覚めた。
行かなくちゃ。
「うにゃっ」「うにゃ」
聞こえてるよ。
今から行くから待っててね。
お返事してベランダに駆け付けた。
ベランダでころんころんしながら、風の音や匂いを感じてブラッシングしてもらうのは大好きだ。
だから「ときとき」のフレーズは聞き逃さない。
山彦さんが仕事に出かけて、まめまるさんの手が空いたら、ときときタイムが始まる。
聞き逃すと、ときときタイムが無くなっちゃうから一大事なのだ。
うーちゃんが着いたときは、まめまるさんがもう既にベランダで待っていた。
「お～、お待たせっ」
逸る気持ちを抑えきれず、ベランダに飛び出そうとした。
お～っと。
ナニコレ？
ベランダに出ようとして異変にすぐに気が付いた。
いつもと違う。
何だ？
白い…。
白いのがベランダに置いてある…。
白いのが降ってきている。
ベランダの端っこで、まめまるさんが笑いながらおいでおいでしてる。
えいっ。
勇気を出して出てまめまるさんのところまで行ってみた。
おー、この白いの、なんかサクサクしてたっのしー。
おー、ふわふわで、サクサクで。
やっほーい。
隅っこから隅っこまでパトロールだぁ。
「これはね、雪って言うんだよ」
「雪が温かくなるとお湯になるんだよ」
そう教えてくれた。
お湯は好きだ。
このふわふわの雪も好きだぁ。
ん？
おや？
冷たいぞ。
これは楽しいけど、好きだけれど、手々が冷たいぞ。
すっごく冷たいぞ。
ひや～冷たい。
「手々が冷たいから帰るっ」
慌てて踵を返しお部屋にダイブ。
この冷たいのを温めると大好きなお湯になるのって本当だろうか…？
まめまるさんの笑い声が背中で聞こえる。
こうして、うーちゃんの雪降り体験は一瞬で終わりを迎えたのでした。
期待していたこの日の「ときとき」は、おあずけとなりました。
代わりに、スノーボールを作ってもらって、溶けるまでお部屋で遊んだのでした。
税込み合計 ０円
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