うーちゃんと1粒のカリカリの物語

うー様

「うーちゃん、うーちゃ~ん」
やれやれ。
まめまるさんが、遠くで呼ぶ声がする。
「うにゃ」
うーちゃんは、今それどころじゃないのだ。
だって、蜘蛛さんを見つけたからね。
お尻がムズムズしちゃう。
「うにっ」
さっき蜘蛛さんが床にいるのを見つけたんだけど、手々で押さえたら、何とぴょ~んって跳ねて、壁に飛び移ったんだよ。
せっせと壁を登ってるから、どこまで行くのか観察してるんだ所なんだ。
蜘蛛さんは、うーちゃんが届かないずっと高いところまで行けるし、天井だって這って進めるんだよ。
だから、遠くに行かないように時々ちょいちょいするんだ。
「にゃ」
駄目だって、遠くに行っちゃ。
「うーちゃ~ん」
もう何だよ。
お取込み中だから、今は行けないんだって。
まめまるさんだって有るでしょう、お取込み中。
アレだよ。
「にゃお~ん」
ひとまず、良い返事だけはしておくかぁ、と。
「うーちゃん、どうして1粒だけ残すの?」
あぁ、ご飯の器を持ったまめまるさんが近づいてきたよ。
どうしてって?どうしてご飯を1粒だけ残すのか?
そんなことはうーちゃんも分からない。
分からないけど何となく。
全部食べたら無くなっちゃう。
食べたくなった時に、何もないのって不安じゃない?
保存食だよ。
まめまるさんだって、大好きながお菓子が2個有ったら、1度に食べずに、1個は取っておいて次の日に食べたりするでしょ?
同じだよ。
それにさ、もしもだよ。
もしもお腹を空かせたお友達が遊びに来ても、全部食べてしまってたら、おもてなし出来ないでしょ?
だからだよ、多分。
だって、分かんないんだもん。
本当の事は自分でも。
でもさ、なんとなく全部食べちゃいけない気がするんだよね。
未来の自分の為なのか?困っているお友達の為なのか?
分かんないけど、今、うーちゃんが一人で全部一度に食べちゃいけない気がするんだよね。
しかも、そこそこお腹が一杯なのに、無理して食べるのは絶対違う気がするんだよ。

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