今日のできごと　2022年5月29日

一昨日、会社から帰宅した山彦さんが、徐に言った。
「芋ほり行くか？」

私は、土を触るのが好きだ。
土の感触も、草や土の匂いも好き。
家庭菜園レベルの事しかしたことが無いから、お仕事として農業を営んでおられる方の大変さは知らない。
だから、そんなことが言えるのだと思う。
それでも、汚れるから嫌、虫が苦手、暑い、疲れる・・・・なんてことは全く思わない。
デパートで買い物するより畑で草むしりする方が、好きなのだ。
50歳も過ぎればそうなるのか？と思われるかもしれないけれど、私について言えば10代20代の頃から変わっていない。
複雑で人工的な大量の音や匂いや照明や人の気配を感じる場所より、多様性のある、けれどけっして人間が再現できない、しかもそれは季節や気温などで変化し、言うなればその時限定の音や匂いや風や感触を感じられる場所の方がずっと好きなだけである。
そんな私が山彦さんの芋ほりのお誘いを断るはずがない。
突然のお誘いに戸惑いつつも、「行く」と即答。
但し、うー様のおしっこが出てたら・・・だけど。

「会社の畑の芋ほりで、会社のイベントやねん」と。
あぁ、そう言う事か。
山彦さんから芋ほりなんて言葉が今まで出たことが無かったから不思議だったけれど、納得。
「山彦さんが良いなら、私はどこでも、誰と一緒でも、何のイベントでも良いよ～」
大体、会社のイベントなら、むしろ参加しておいた方が、日頃一緒に仕事しない人とも仲良くなれるチャンスじゃないか？
しかも私は、山彦さんの会社に感謝している。
会社のイベントなら、「芋ほり」がメインでも、準備や、後かたずけや、何ならバーベキュー的な事も有って、女性の手が必要なのかもしれないな？なんて想像した。
私で役に立つなら、草取りでも、水やりでも、イベントの手伝いでも何でもやりましょう！

ところが、山彦さんは「純粋に芋ほりだよ」と言う。
「但し、観光農園みたいに整備されたところじゃないから、草ぼうぼうやけど～」
へぇ。

で、今日がイベント日だった。
有難いことに、うー様のおしっこは、薬を飲み薬に変えても何とか出ている。
行かない選択肢は無い。
むしろ、草むしりのお手伝いだと言われても、土に触れるなら参加したい。

8時半の集合に間に合うように到着すると、既に何名か畑で芋のつるを刈り取って、芋ほりがしやすいように準備して下さっている。
慌てて手伝おうとするけれど、「飲み物でも飲んでゆっくりしててください」なんて、優しい言葉をかけて下さる。
会社のイベントにおいては、社員は無料の労働力として扱われると信じている私は、戸惑うばかりである。

どうやら、昨日と今日の2日に分かれてのイベントで、強制は一切なくって、本当に参加したい人だけのイベントで、しかもほったじゃがいもは分けて下さると言う。
マジかぁ。
今日の参加者が集まったところで、畑の管理をしておられる方から、掘り方とじゃがいもの品種が「きたあかり」「メークイン」「シンシア」の3種類だから、混ざらないように別々の袋に入れるようにと説明があった。
総勢15名ほど。
子供さんを連れてきている方もいて、にぎやかになった。

じゃがいもの出来は素晴らしかった。
見たことも無い大きさのじゃがいもが畑から掘り返されて姿を現すと、あちらこちらで歓声が上がる。
「うぅ、楽しい」
鳥の声、土の匂い、じゃがいもの匂い、知らない虫たち、背中に当たる日光、草と川の水の匂いが時々風に乗って漂う。
芋ほりしているふりをして、軍手をした手を土に埋めてみる。
ふかふかの土の感触。
大きなムカデさえ愛しい。
カチコチの体と脳に生き物のエネルギーがするっと入って来て緩む。
あぁ、幸せ。
楽しい。

１時間半ほど、作業に没頭した。
掘り返した芋は、メークインは昨日参加された方が掘ってしまったようで、きたあかりとシンシアの2つの品種だったけれど、大きなビニール袋に30個余りになった。
そして、それを参加者の家族数で分けると我が家は5つ頂いた。
凄い量だった。
掘ったお芋は貰えるらしいよ～と山彦さんは言ってたけれど、せいぜい1株分位(20個位？)頂けたら嬉しいなぁなんて思っていた私には、衝撃的な量だった。
そもそも、お世話する部分の大変なところをまったくやらずに、収穫すると言う一番楽しい部分だけやらせてもらって、こんなにリラックスした気分を味わった挙句、じゃがいもを貰えるなんて。
なんて会社なのだ。

収穫を済ませてワケワケし片付けが終わると、本当にあっさり解散となった。
これも衝撃的だった。
え？本当に帰って良いの？
何かお手伝いが有るんじゃないの？
飲み会は？
ミーティングは？
いやいや、何もなく本当に芋ほりして解散だった。
純粋な芋ほりイベントだった。
そして、畑を管理して下さってる方と私が思っていた方が、と～っても偉い方だったと知ってひっくり返りそうになった。
山彦さんは、「小さな会社だから、社長も社員も無いねん」と言うが、いやいやいやいや。
すでに遅しだけれど、無駄に動揺した。

帰る途中、おすそ分けできるところにおすそ分けしながら帰宅。
ちょうどお昼だったので、ピザトーストに角切りにしてレンチンしたじゃがいもをのせて焼いてみた。
ひやー。
おいちぃ。
本当の産直。
本当の新じゃが。
これはたまらない。