山彦さん契約社員になる

家族

山彦さんは、長年個人事業主として頑張ってきた。
コロナ禍でも、昨年は一昨年と変わらず、いやむしろ順調な位だった。
ところが、今年の3月中旬。
主要な取引先から、4月以降の発注の激減を通達された。
「ゼロにはならないけれど、ほぼゼロになる」
そんな通達だった。
「取引先の会社が、その事業から撤退するため」だった。
まさに青天の霹靂。
そして、4月になると本当に発注が0になった。
その取引先と取引を継続するためには、仕事を受注していなくても、機材のレンタルや定期的な契約更新や研修にかかる費用が発生する。
このまま契約を続けていても、赤字になって行く。
4月の時点では、状況が変わるかもしれないと一縷の望みを持ち様子を見ていたが、後に結局契約解除を決めた。
あぁ、悲しき自営業。
つまり、収入ゼロが決定。

これが、20代や30代ならやり直しが出来る。
そして、私が元気で働けていたら食べていく位は出来たはず。
しかし、現実は妻は病気持ち無職で、夫は50代後半。
しかも、私の両親は介護が必須な状態となっていった。
つまり、やり直しがきかない年齢の2人がともに無職となって、再起不能の状態。
ぴーんちっ。

山彦さんは、経験の有無を問わず就職活動し、やれそうな仕事にトライしていった。
未経験の仕事は、50代から始めるのは相当勇気がいる。
かといって、スキルが活かせそうな仕事は年齢的に狭き門だった。
人生100年時代だから50代なんてまだ若いよ~なんて言うが、今までやってきた事を続けてやるのと、50代で新しく始めるのは雲泥の差がある。

結局、8月中旬から現在の会社にお世話になることになった。
きこりの山彦さんが誕生した。
但し、3か月は試用期間。
そりゃそうだ。
そして、山彦さんは3か月間、本当に頑張った。
きこりとして自然の中で未経験者が働くとは、なんて過酷なんだろうと、山彦さんの姿を見て思った。

先日、使用期間が終わり、契約社員としての労働契約を結んでもらった。
有給休暇が5日ついた。
これまた1月末までの契約となっており、更新されるかどうかは約束されていない。
最悪「2月から無職」が有り得る契約。
厳しぃ。
けれど、契約社員となれば、社会保険や厚生年金に加入してもらえるらしい。
本当なら有難い。

因みに、山彦さんは一昨年に比べて昨年の収入が減っていないので、昨年持続化給付金を申請していない。
今年になって政府が打ち出す支援策は、飲食店や観光業、及びその関連業者向けの物ばかりで、4月から無収入になったというのに受けれそうな支援金は無かった。
岸田総理になって出てきた支援策も、子供がいない我が家には関係が無い。
最近出てきた今年の持続化給付金は、11月からの事業所得が対象になるという。
もがいて苦しんだ我が家には、これまた関係のない話になるのだろう(悲)
ちょっと、あんまりじゃないかと愚痴ってみる。
けれど、愚痴ってみても誰も助けてくれない。
泣いてみても、状況が良くなるわけじゃない。
どんなにつらい状況でも、200円の大根は100円にはならない。
1円足りなくても、売ってもらえない。

社会保険に加入してもらえるなら、自営業は廃業しようと決めている。
父の命は、長くてあと数か月。
父の命の期限が終わるころ、私の体は良くなっているだろうか?
それとも、介護で更にダメージを受けているだろうか?
山彦さんは、今の会社で働けているだろうか?
数か月先の事が分からない。
本音を言えば、健康的にも経済的にも不安で不安で仕方ない。

ただ、山彦さんは、自分がどんなに過酷な状況でも、私にはあたらない。
早く病気を治療して働けとも言わない。
腰が痛い、手が痛い、眠たい、しんどい・・・とは言うが、私には「気楽で良いなぁ」なんてことは言わない。
(うー様には言ってるが・・・)
借金が有るわけではないし、これから育てなければならない責任が有る子供がいる訳でも無い。
きっとなんとかなる。
嬉しそうに労働契約書を見せてくれる山彦さんと一緒なら。

コメント

タイトルとURLをコピーしました