お弁当のミラクル

山彦さんの会社では、月に一度講習会が行われる。
講習会の日は、いつも通り仕事を済ませた後に講習会となるので、帰宅が遅くなる。
で、帰宅が遅くなるからが理由なのか、会社からお弁当が支給される。
昨日は、そんな日だった。
あらかじめ、講習の日は決まっているはずだけれど、山彦さんが知らないのか、聞いていても忘れているのか、分かっているけれど私に伝えてないだけなのか、どっちにしても私が前日までに知るすべはない。

実家から帰宅し、腰が痛くて動けなくなっている私に、山彦さんから「講習会が有るから遅くなるよ、お弁当も有るよ」と、ラインが届いた。
丁度、ご飯を炊飯器にセットしたばかり。
副菜は昨日の残り物である、大根とうすあげの煮物、たらこ、焼いた砂肝。
地味な色合い。
ネギかカイワレでも散らすかぁ。
それにしても主菜を考えねば。
炒め物でもしようか。
帰りにコロッケでも買って来ればよかったかな・・・。
どうしよう・・・。
そんなタイミングで、ラインが来たのだ。

いつもより帰宅時間が遅い。
お弁当持ちである。
この2つの情報で、私は考えた。
山彦さんには、お弁当と我が家の副菜セットを食べて貰おう。
私はご飯を炊いてるからおかずは副菜だけで良いし、足りなければお漬物や納豆が有るじゃないか。
なら、お味噌汁だけ作れば良いし、とろろこぶですまし汁ならお湯を沸かすだけで出来上がる。
主菜を作らなくて良いということは、山彦さんが帰っていてから用意しても間に合う(喜!)
もうちょっと横になっておこう。
やっほー、神様ありがとう。

程なくして、山彦さんが帰宅。
お弁当らしき袋をテーブルに置いて、お風呂に行ってしまった。
書類なのか、お弁当以外の物が一緒に入っている。
何だか大きな荷物。
よしよし、お弁当が間違いなく有ればそれで良いのだよ。
お味噌汁を作ろう。
結局、豆腐とわかめで作ることにした。

お味噌汁が出来上がると同時に、山彦さんがお風呂から出てきた。
私が副菜とお味噌汁を準備する間、山彦さんがテーブルに着いて、お弁当を取り出している。
「今日は、2段になってるよ」
山彦さんの声がするが、お味噌汁をよそっているので、
「へぇ、豪華だねぇ」と見もせずに返事。
盛り付けた副菜と、お味噌汁をテーブルに運んだら、同じ包装のお弁当が2つと謎の箱が1つ並んでいた。
確かに入っていた袋の中では2段だったかもしれないが、実際は同じサイズの同じ厚みのどう見ても同じものが2つ。
「???」
「中身が違うのかな?」と山彦さん。
「そうなんかな?、どうみても同じものに見えるけれど」と私。
「開けてみよう」
私もテーブルに着いて、早速開封の儀。
頭の中で、ドラムロールが流れる。
結果は、想像通り写真の内容の、全く同じものが2つ!
外袋には、名前が書いてあり、別の人の物を間違って持って帰った訳ではなさそう。
既にセットされた状態で頂いたので、2つ入っていた理由は分からないと山彦さんは言うが、喜んだのは私。
同じものなら、1つは私に回ってくる。
わーい。
2度目の神様ありがとう。
山彦さんの会社様、雇ってもらって有難いのに、こんなミラクルをありがとう。
こうして、私達はいつもよりずっと豪華な晩御飯に有り付いたのだった。
お陰様で、たらふく食べて元気になって、食器洗いが軽やかに出来た。
きっと神様が「頑張れよ」と応援してくれているのだ。
小さなミラクルに、心が躍る。

昨日の私は、ただ疲れて、腰が痛かっただけだ。
ケド、人が辛くてしんどい状況に陥った時、続けて頑張ってその状況を乗り越えられるか、あきらめて放り出してしまうの境目って、意外とこんなミラクルが起こるかどうかなのかもしれない。
ミラクルが起こると、それが小さなものでも「よし!頑張ろう」と思える。
誰かを応援したいと思うなら、「頑張れ」と言葉で励ますより、小さくてもミラクルを届けたいな。
そして、ミラクルを届けてくれる周りの人を大事にしたいな。

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