介護用品の搬入

まめまる父

先日注文済みの介護用品が、実家に搬入される。
耳の聞こえない母だけでは対応できない。
私の出番であーる。
搬入されるのは、介護ベッド&マットレス、ポータブルトイレ、車椅子2台(室内用、屋外用)。
室内に段差が有るので、解消のためにスロープを4か所設置してもらう。
ポータブルトイレのみ買い取り。
他はレンタルでお願いした。
あらかじめお願いしていた場所に、ベッドを入れてもらって、スロープを設置してもらったら、あとはそれぞれの使い方を聞いて、ポータブルトイレの料金を支払って終了。
2時間も有れば、全て終わるだろう。

我が家から実家までは、約1時間半。
同じ市内だけれど、バス→電車→バスと乗り継ぐ。
車だと30分程度の距離だから、距離のわりに意外と時間が掛かる印象。
乗り換え時間を含むから仕方ない。

10時に約束したので、9時に実家に着いてれば、母と話をして、準備を済ませ余裕を持って対応が出来るだろうと7時25分に家を鼻歌交じりで出発。
予定通り9時過ぎに到着。
部屋に入ると、リビングで母がマッサージチェアーに座って、アイスを食べながらテレビを見ていた。
耳は聞こえないが、字幕が付いている番組も有るし、音域によっては聞こえるみたいで、テレビは今も母のお友達。
後ろからトントンと肩を叩くと、「ひやっ~」とマッサージチェアーから転げ落ちそうに成る程驚く母に、思わず笑ってしまう。
いやいや、私が来るの知ってるはずでしょうが。
「アイス、食べる~?」等と呑気な母を窘めて、支払代金や印鑑等、必要な物を確認し準備。

予定の10時より15分ほど早く業者さんが来てくれた。
男性2人組。
業者Aさんと業者Bさん。
「ベッドの組み立て作業が有るので、早めに始めても良いですか?」業者A。
願ったり叶ったり。
母が作業の邪魔をしないように見守りつつ、注文通りの商品が搬入されているか、確認。
時々、「これはな~に?」等と、業者Bさんに絡む母の声が聞こえて、ビビる。
母の問いに、業者Bさんは丁寧に答えてくれているが、母は聞こえていないので、次の会話は無い。
不毛・・・。

最初は、ポータブルトイレが運び込まれて組み立てられた。
外せるところ、洗えるところ、ひじ掛けの昇降操作、注意事項、確認。

2番目は車椅子2台。
これまた、畳み方・広げ方に始まり、足置きや背もたれ、高さの調節、ブレーキの使い方等、確認。
何故か缶コーヒーを配り始める母。

3番目はベッド。
高さ調節、頭部・足部の上げ下げ、転落防止柵の使い方、リモコンの注意、適当な寝具の話、テーブルの相談、等。
フムフムと聞いていると、徐に母が、「ベッドの向きを変えて欲しい」と騒ぎ出す。
ベッドの向きは、家具の配置(地震が起きた時に父に当たらないように)、日当たり、景色、テレビの設置場所、ポータブルトイレを置くスペース、もしも訪問入浴やリハビリを利用する場合の作業スペース等を考えて、決定したはずだった。
ところが、この期に及んで、母に”気に入らない何か”が有るらしい。
業者Aさんと顔を見合わせて、「えーっ」とお互い心の中でつぶやき、瞬きする。
すっかり、組みあがっているが、向きを変えようと思えば出来る。
「どうしますか?」と業者A。
「反転してほしいの」と母。
「いや、このままで」と私。
むー。
「どうしますか?」再び業者A。
私、母にマッハで説明と説得。
「このままで大丈夫です」私。
母「・・・・・。」
やれやれ。

最後がスロープ。
これは、車椅子対応の為なので、実際人を乗せて試してみたい。
試せば、車椅子の使い方も分かるし。
本日の業者さんは、若い男性2名。
どう見ても、父より身長も体重も有る。
だとしたら、最初は母を乗せて試すしかない。
「ちょっと、乗ってみてくれない?」と母に頼む私。
「良いわよ」と、ちょっと嬉しそうな母。
母を乗せて、車椅子を押す。
うんうん。
大丈夫そう。
室内用は、6輪の物を選んだので、小回りが利く。
フラットな所は、難なく行けそう。
次は、設置してもらったスロープを利用し、段差に挑戦。
一番段差が大きいがよく使うであろう場所を使って、まず下ってみた。
ちょっと力がいるが、出来ない事は無い。
ただ、「前のめりになるから、ひっくり返りそうで怖い」と話すと、「じゃ後ろ向きに降りてみてください」と業者A。
やってみると、確かに後ろ向きのほうが良さそう。
次は、登ってみた。
登ってみた、の。
ケド、登れなかった。
力いっぱい押しても、スロープを超えれない。
「・・・」私。
「・・・・・」業者A。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「気持ち悪い・・・」母。
「えー」業者Aと私。

吐きそうになっている母を寝かせて、スロープの検討が続く。
やはり、スロープの角度が強すぎて、難しい。
私と母の組み合わせで難しいのだから、母と父の組み合わせだともっと無理。
どうしたものかと思案に暮れる。
「玄関用に持ってきたスロープを試してみましょうか?」業者A。
室内用は、ゴム製で色が茶色、部屋に馴染みやすい。
玄関用は、金属製、大きくて重いが、スロープの距離を十分とれるので、傾斜が緩やかになる。
試してみたら、かなりやり易い。
母がいなくなったので、業者Aを車椅子にのせて登ってみたが、できた。
こっちが良い。
ただ、見た目がお外仕様なんだわ。
いやいや、見た目を気にしている場合じゃない。
それと、もう一つ問題が、お外仕様のスロープを付けると、そこに付いているドアが閉まらない。
これから冬になると、厳しいかも。
こっちの方が困るかなぁ。
結局悩みに悩んで、妹夫婦と相談することになった。
事務的な手続きをして、ポータブルトイレの代金37900円を支払った。

業者さんが帰ったら、母に筆談で使い方を説明する予定だったが、母が気分悪くなり、後日出直すことにした。
せめて休憩して帰ろうと、一人でコーヒーを飲みながら、妹に本日のあれこれをラインで報告。
ぐったりしていると、妹の旦那さんが様子を見に来てくれるという。

妹の旦那さんは、妹と年の差が大きく、すでにリタイアしている。
時間が有るので、父や母の通院の送迎を気持ちよくしてくれている。
そして、私が通院の付き添いをしたときは、なんと私を自宅まで送ってくれる良いやつなのだ。
「彼が来るよ」と母に伝えたら、母が途端に元気になった。(えっ?)
カレーライスを食べると言い出し、パックのご飯をレンジでチンして、レトルトのカレーを温め始めた。
ドン引きしている私にもカレーを用意してくれて、あっけにとられる私の目の前で、美味しそうにカレーを食べた。
あなたって奴は・・・。
心の中で、もやっとしながら、吐き気が治まったなら良かったと思いなおす。

連絡が有って30分ほどで、本当にきてくれた。
私が彼に業者からの説明を伝え、彼が妹に説明し、後日母が気分良くなったら、妹が母に説明する。
そんな流れになった。
「もうすっかり元気になって、カレーを食べているよ」私がそう言うと、ニヤッとしていた。
振り回されるのは、いつもの事だから、慣れているのだろう。
ごめんなさい、である。
私が彼に説明をしている間、母はポータブルトイレの位置を変えたり、ベッドのマットに敷く布団を物色したり、忙しそうに動き回った。
どうやら、気分が悪いのではなくて、機嫌が悪かったらしい・・・。

こうして、介護用品の搬入が終了した。
ほんの数時間で終わるつもりだったが、帰宅したら17時。
しかも妹旦那が送ってくれての時間。
車椅子の押し過ぎで腰が痛いし、動けなくなった。

介護はまだ始まっていないのに。

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